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研究テーマ

テーマ1: ニューロトロフィンによって誘導される細胞内情報伝達機構の解析

NGFやBDNFは、それぞれ神経細胞膜上の特異的受容体(TrkAやTrkB)と結合することにより、受容体を介した細胞内情報伝達経路を活性化させる。モデルニューロンであるPC12細胞はTrkA受容体を発現しており、NGFに応答して神経細胞に分化するので、このPC12細胞や、PC12細胞にTrkBを強制発現させた細胞株や、神経細胞を使って細胞内情報伝達機構の詳細な解析を行っている。各ニューロトロフィン間の細胞内情報伝達機構の比較や、生存維持作用(細胞死抑制作用、アポトーシス抑制作用)と分化誘導作用間の細胞内情報伝達機構の比較も詳細に行っている。

[Keywords]: 神経細胞、細胞工学、細胞内情報伝達機構、神経成長因子、脳由来神経栄養因子

テーマ2: 酵母のtwo-hybrid systemを用いた細胞内情報伝達機構の解析

細胞内情報伝達に必要なTrkAとTrkBの細胞質領域に結合する新規タンパク質(遺伝子cDNA)の同定と解析を、酵母のtwo-hybrid systemを用いて行っている。さらに、他の情報伝達タンパク質に結合する新規タンパク質の同定と解析を行っている。同定後の解析では、新規タンパク質を各種株化細胞(PC12細胞、COS細胞)中に強制発現させ、タンパク質-タンパク質間の相互作用を観察すると共に、強制発現後の表現型を観察することで機能を解析している。最終的には、X線結晶構造解析を行うことにより、タンパク質の高次構造との機能相関を解析することで、近年高まっている有用な機能タンパク質の解析を深める。

[Keywords]: Two-hybrid System、遺伝子工学、タンパク質工学、構造機能相関

テーマ3: 小胞体ストレス誘導とニューロトロフィンによる抑制作用機構の解析

タンパク質の合成、修飾、輸送を行う細胞内小器官である小胞体内において、何らかの影響で、正しい構造が構築できず不整合になったタンパク質が蓄積した場合、小胞体ストレスと呼ばれる刺激が細胞に負荷され、アポトーシスにより細胞が死滅する。近年、この現象がアルツハイマー病、パーキンソン病、I型糖尿病の進行過程の主要細胞中で観察されており、治療法の確立を目指して脚光を浴びている。しかし、詳細な進行過程の解析は進んでいないため、それを抑制しうる決定的な手段が未だ見出されていない。当研究室では、NGFやBDNFが、小胞体ストレスを抑制し、アポトーシスを抑制することを既に見出しているが、現在その作用点を詳細に解析している。本テーマにおいては、細胞変性疾患に対する有用遺伝子の探索と解析を行い、将来、遺伝子治療が汎用される時代を見据え、医療の現場での応用を意識しながら研究を進めている。

[Keywords]: 小胞体ストレス、アポトーシス、細胞内情報伝達機構、神経成長因子

テーマ4: 環境汚染化学物質による神経細胞への影響の評価と防御対策

内分泌撹乱物質(環境ホルモン)をはじめとする環境汚染化学物質は、生物の生殖異常を主として評価されている経緯があり、高等生物の恒常性を複雑にコントロールしている脳・神経への影響については、未だ解析が進んでいない。環境ホルモンの他、河川、湖沼、海洋に流出した人工化学物質を幅広く解析する必要性がある。本テーマでは、神経細胞様に分化したPC12細胞を用いて、各種環境汚染化学物質や人工化学物質を添加し、細胞内情報伝達機構に対してどのような影響を及ぼすのかを解析している。これら環境汚染因子は、微量であるが長年にわたって作用し続けることが、疾患につながるとも考えられている。最終的には、環境汚染因子と高齢化による疾患との関わりを明らかにし、高齢化社会での医療にも貢献できればと考えている。

[Keywords]: 環境汚染化学物質、内分泌攪乱物質、地球環境汚染

テーマ5:自家血塞栓性脳梗塞の誘導と抑制に関わる分子の解析

近年の高齢化社会における成人病の増大が深刻な問題として早期の対策が求められている。当研究室では、成人病のなかで脳梗塞に注目し、他大学との共同研究により、ラット自家血塞栓性脳梗塞モデルを利用して疾患の進行と抑制に関わる分子の解析を行っている。本モデルラットにおいて、既に、特定のプロテアーゼが関与していることを見出している。また、免疫抑制作用と抗癌作用を有する薬剤の投与により、梗塞巣が縮小することも見出しており、疾患治療としての有効性を解析している。今後、成人病治療分野へも新たな治療法をもたらし得ると考えている。

[Keywords]: 血栓性脳梗塞、プロテアーゼ、高齢化社会

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